/棺に供える花、その「美」と「調和」について考える
棺に供える花、その「美」と「調和」について考える:故人を送る際、感謝や愛情を込めてたくさんの花を棺に手向けるのは、とても自然な行為です。しかし、時にその「善意」が、本当に美しい別れにつながっているのか、考えさせられることがあります。棺を埋め尽くすほどの花は、故人の静かな旅立ちを妨げ、どこか不自然に感じられることはないでしょうか。
故人の尊厳と花のバランス
小さなお葬式を望む人が多くなりました。棺のなかに隙間なく花を敷き詰め故人が埋もれてしまったのでは、故人との静かな対話よりも、「これだけ花を捧げた」という周囲へのアピールに見えてしまう危うさもはらんでいます。
花は本来、季節の移ろいや命の循環を象徴する、繊細で美しいものです。あまりに過剰に使うと、その自然な美しさや、込められた意味が失われてしまうこともあります。たとえば、フランスでは花嫁のヘッドアクセサリーに生花を使うと肌がくすんで見えることから、シルクの造花が使われることがあります。同様に、故人の顔まわりを生花で覆うことで、故人の顔色をかえって黒ずんで見せてしまう可能性もあるのです。
余白が語る、故人の存在
棺のなかにあえて「余白」を残すことで、故人の存在がより際立ち、見る人の心に静かな余韻を残します。逆に、花でぎっしりと埋め尽くしてしまうと、その余白が消え、視覚的にも精神的にも「重い」印象を与えてしまいます。美しく整えられた空間は、故人の安らかな旅立ちをより一層尊厳のあるものにしてくれるでしょう。小さなお葬式ほど故人への敬意と尊厳に配慮がすることが大切ではないでしょうか。


実は、大量の生花を棺に入れることは、火葬に際していくつかのデメリットを生じさせる可能性があります。
- 燃焼効率の低下 生花には多くの水分が含まれているため、火葬炉の温度が安定しにくくなり、火葬に時間がかかることがあります。
煙や臭いの発生 花の種類によっては、燃える際に強い煙や香りを発生させ、火葬場の設備に負担をかけることがあります。また、使用された農薬や保存剤が燃えることで、化学的な臭いが発生することもあります。特に繊維質の多いユリや蘭などは、燃え残ってしまうことも少なくありません。
環境への負荷 大量の花を燃やすことで、二酸化炭素や微粒子の排出量が増え、環境に負荷をかけるという懸念も指摘されています。
「小さなお葬式」ほど棺の中を気高く美しく
故人の存在を際立たせ、静かに気高く最後まで故人の尊厳を守る方法があります。金の糸京都の『冠紗』や『想衣』は故人への敬意と美意識のあるエンディング衣装です。花の扱いは慎重にすることでより相乗効果があります。また『冠紗』には香りを偲ばせるポケットが設けてあります。美しさを保ちつつ、環境や儀礼の質にも配慮する旅立ちはこれから広がっていくことでしょう。https://kinnoito-kyoto.jp/