大切な人を亡くした時、故人との最後のお別れの時間は、遺族にとってかけがえのないものです。その中で、故人の安らかな顔を見つめることは、深い悲しみの中にある心を少しでも癒す助けとなるでしょう。しかし、時間の経過とともに変化する故人の顔色は、遺族の心に複雑な思いを抱かせることがあります。
死後の顔色変化の理由と一般的な対応
亡くなった人の顔色は、遺体の状態や時間の経過とともに自然に変化していきます。医学的な観点から見ると、以下のような変化が起こり得ます。
- 死斑(しはん): 死後数時間で、血液が重力によって身体の下部に移動し始めることで、紫色や赤紫色の斑点が現れる現象です。
- 青白さ: 死後数分から30分以内に血液の循環が停止することで、肌の色が青白く見えることがあります。
- 変色: 死後24時間から48時間以降、皮膚が緑がかった灰色に変わり始めることがあります。これは気温や湿度などの環境要因も影響します。
一般的に、亡くなった人の顔にはハンカチ程度の大きさの白い布がかけられます。通夜が終わり、納棺する頃には死後24時間以上が経過し、顔色の変化が現れていることがあります。葬儀では、故人とのお別れのために顔にかけられた布が外され、棺の中には生花に囲まれた故人の素顔が見えるのが一般的な葬儀の習慣です。
故人の尊厳を守る『冠紗(かんさ)』の誕生
「自分らしく美しく旅立ちたい」と願う人は少なくありません。もし故人が、ご自身の亡くなった時の顔や、時間の経過とともに変化していく顔色を他人の目にさらされることに抵抗を感じるとしたらどうでしょうか?そんな故人の繊細な気持ちに寄り添い、金の絲京都が開発したのが、顔を覆う美しい絹のベール『冠紗Cansa』です。
『冠紗Cansa』:自分に贈る最後のご褒美
『冠紗Cansa』は、まさに故人がご自身に贈る「最後のご褒美」と言えるでしょう。金の輪をイメージした冠の周囲に薄い絹を金糸で丁寧に縫い付けた、軽く美しい顔冠紗です。
『冠紗』は、老いや病によってやつれた姿、変化していく顔色を他人に見せたくないという、もの言えぬ故人の尊厳を守るために、二枚の紗(うす絹)を重ねています。外側の紗は、家族が最後のお別れの際にめくることができる層。内側の紗は、故人の顔の尊厳を最後まで守るため、めくれない構造になっています。冠には、魔除けの意味を持つ金箔の刻印が施されており、『冠紗』は故人にとって、まさに「最後のお守り」でもあります。
美しい『冠紗』に包まれた故人が残すもの
棺の中に安らかに眠る故人の顔の記憶は、見送る人たちの心に長く深く残ります。『冠紗』は、絹ならではの優しい光沢で顔色の変化を自然に隠し、遺族の方々が生前のお元気だった頃の故人の美しい顔の記憶を大切に留める手助けをします。故人の尊厳を守りながら、遺族の心に安らぎをもたらす『冠紗』は、新しいお見送りの形として、多くの人に選ばれています。